ちょっと待って!その駆け込み、大丈夫?「駆け込み受診」が損をしている理由を考える

「診察終了時間ギリギリに行ったら、スタッフから嫌な顔をされた」

「診察時間が終わって間もないのに、居留守をつかわれ診てもらえなかった」

これは私が飼い主さんから実際に聞いた話ですが、おそらくこのような経験をした方は少なくないことでしょう。

 

診察が終わる間際、もしくは終了後に診察をしてもらおうとする、いわゆる「駆け込み受診」。

駆け込みで受診をする理由はいろいろあると思いますが、そのデメリットを考えたことはあるでしょうか?

今回は、駆け込み受診について考えていきたいと思います。

目次

なぜ「駆け込み受診」になる?

一口に駆け込み受診といっても理由はひとそれぞれですが、経験上大きく2つに分けられます。

・待ち時間を短くしたい
・様子を見ていて、ギリギリになった
ほかにも、仕事や用事が終わってから動物病院に来ると時間が遅くなってしまうという場合もありますし、突然体調が悪くなったという場合もありますが、今回はこの2つの理由をそれぞれ考えていきます。

理由① 待ち時間を短くしたい

朝一番に行くと混んでいて待たされる。

長い時間待たせるのはペットにもストレスがかかるから、できるだけ空いている時間に行きたい。

診療時間の最後のほうならば、待ち時間も少ないし、獣医師も話をよく聞いてくれるに違いない。

 

時間も節約になって、獣医師にもよく診てもらえるはず、というお得感を狙ったタイプです。

あえて診察終了間際を狙って受診しています。

理由② 様子を見ていたら、ギリギリになってしまった

いつもはご飯を催促するぐらいお腹を空かせているのに、今日はご飯を残した。

楽しみにしている散歩なのに、今朝はあまり歩かず、早く帰りたがる。

 

明らかに調子が悪ければすぐに病院に行くけれど、そこまででもないから、どうしようかと迷っているうちに診療時間のギリギリになり、やっぱり心配で動物病院に駆け込むタイプです。

「駆け込み受診」は本当にお得?

一見すると、空いていてすぐに診てもらえる診察終了間際の駆け込み受診はお得そうですが、本当にそうでしょうか?

実はお得に見えて、まったくその逆なのです!

一体それはなぜなのか。詳しく見ていきましょう。

午前の診察時間終了間際の場合

「昼休みは暇なんでしょう?」と飼い主さんは思っているかもしれませんが、傍目から見えている時間ほどスタッフが休んでいるわけではありません。

 

午前中の診察終了後は、手術をしたり、午後の診察に向けて掃除や準備をしたりするための時間です。

動物病院によっては往診や、猫やエキゾチックアニマルなど、デリケートな動物のための時間としてあてていることもあります。

そのような慌ただしい時間の合間を縫ってスタッフは休憩をし、午後の診療に向けて英気を養っています。

 

診察終了間際はゆったりしていてよく診てくれそうに思えるかもしれませんが、むしろ時間内に診察を終わらせなければと焦っていることも多く、丁寧な診察をしたくともできない可能性があります。

午後の診察時間終了間際の場合

一方、午後の診察時間終了間際ならどうでしょうか。

 

動物病院の業務は、想像以上に精神的、肉体的にハードなものです。

朝からフルで診察をしていると、どうしても終わりになるほど疲労は溜まります。

タフで夜型の獣医師や動物看護師もいますが、やはり一日の終わりは疲れにより、精彩を欠くのは自然なことです。

 

また、症状によってはその病院では対処ができず、他の動物病院への転院・紹介をしなければならい事態もあります。

しかし、一般的な診察時間を過ぎていれば、それを受け入れてくれる動物病院の選択肢はぐっと減ってしまい、ペットに不利益になることも起こりえます。

 

さらに診察時間終了後は、早々に帰宅しなければならないスタッフもいます。

そうなると動物の看護にあたるスタッフは日中と比べ少なく、ケアが不十分になることがあります。

迷っているなら早めに受診する

受診しようかどうか迷っていて、診察終了間際になり様子を見るのが不安になり受診するパターンは、多いものです。

動物病院にペットを連れて行くのは、手間も時間もかかることですし、その費用も馬鹿にはなりません。

連れて行ったものの、「ただの心配しすぎだったら…」なんてことを考えると、受診をためらうのも無理はないでしょう。

しかし、ただの心配しすぎだったというのは、結果論でしかありません。

もし本当に具合が悪かったならば、受診しなかったり、処置が遅れたことを後から悔やむことになります。

 

なるべくなら動物病院に行かずに済ませたい気持ちは理解できますが、不安な気持ちがあるならば早く診せるようにしましょう。

そのほうが、動物も長い時間ツラい思いをせずに済みますし、飼い主も気をもむ時間が減るのです。

気持ちよい受診のための注意点

以上のように、駆け込み受診は飼い主と動物病院スタッフのお互いのためにならず、しかもペットの不利益につながる可能性がある理由をみてきました。

ここからは、どうしたら気持ちよく診察を受けられるのかについて考えてみたいと思います。

診察終了時間の30分前には受付をすませる

診察時間は、お店の営業時間と同じです。
駆け込み受診というのは、「蛍の光」がかかっている店舗に飛び込みで買い物に行っているような状態と同じと考えてもらえればわかりやすいでしょうか。
動物病院の仕事は命にかかわることですから、一般のお店と同じように考えるわけにはいきませんが、気持ちよく診察を受けるためには、飼い主としてのマナーも心がけたいものです。
一般的に、受付にはじまり、診察、検査、診断、処置、会計という流れを踏まえると、時間は最低限30分はかかると考えておくのが無難なところ。
ですから、遅くとも診察終了時間の30分前には受付を済ませておくのがよいでしょう。
近ごろでは、受付終了時間を早めに設定している動物病院も出てきていますが、そのような場合でなくても意識していきたいですね。

あなたには一度のことでも、動物病院では日常茶飯事

「駆け込みをしたのはこれが初めてなのに、すごく不快な対応されて二度と行きたくない」

そう思う経験をしたことがある方もいることでしょう。

 

確かに、あなたが駆け込み受診をしたのは初めてなのだと思いますが、動物病院スタッフにとってはそれはいつものことなのです。

あなた以外の人も、同じようなことを日々しているのです。

 

動物病院にとってまず大事にしなくてはならないのは、きちんとした時間にやってくる飼い主さんと動物です。

大事な我がコのために飼い主さんが必死になる気持ちも分かりますが、動物病院スタッフもひとです。

時間外でも動物のために頑張ろうという気持ちがあっても、体力的、精神的にその無理を続けることはできません。

 

時間を順守する人たちによい医療を提供するには、一線を引かなくてはならないことがあるのです。

どうしても駆け込む必要がある場合は、まずは連絡を入れる

そうはいっても、体調が急変し、動物病院に緊急で診てもらう必要がでてくることはあるものです。

そのような場合は、どうにか間に合わせようと急ぐ気持ちはわかりますが、まずは落ち着きましょう。

 

焦って駆け込む前に、まずは動物病院に連絡を入れるのが先です。

・カルテ番号
・飼い主の名前
・ペットの名前
・ペットの状態
・いつ動物病院に到着するのか
診察時間終了間際は、患者さんがいなければ清掃、資料や備品の整理など、次の診察時間に向けての作業を行う時間です。
そこに何の前触れもなく飛び込みの診察があると予定が狂ってしまい、場合によっては飼い主さんが不愉快に感じる対応をされることがあるかもしれません。
しかし、事前に電話での連絡があれば、スタッフ側としても心づもりと、検査や処置の準備にとりかかることができます。
スムーズに診察が受けられるよう、やみくもに飛び込むのではなくまずは電話をするようにしましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?
これまで見てきたとおり、駆け込み受診は、飼い主と動物病院側の双方にとってメリットのあるものではありません。
緊急性の高い場合を除き、ギリギリの受診は避け、お互いが気持ちよく過ごすことができるようにしたいですね。
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