飼い主さんから相談を受けるなかでも比較的多いのは、お薬に関する話題です。
薬の飲ませ方、種類などの相談もありますが、そのなかでも私が気になるのは次のような相談です。
「薬を処方されたけれど飲ませるのが心配」
「薬をずっと飲ませても体は大丈夫だろうか」
「薬をやめたいけれど、やめたらどうなるか?」
相談を受けるたびに、飼い主さんが薬に対する不安を少なからず感じていることを思い知らされます。
そこで今回は、お薬に関する悩みについて考えてみたいと思います。
目次
薬を飲ませなかったり、勝手にやめるとどうなる?
お薬として処方されるものは原則として、効果が認められ、安全性が確認されているものです。
ですが、そうはいっても副作用が全くないというわけではなく、それに対して不安や心配を感じている飼い主さんも少なくないことでしょう。
なかには、処方されたお薬を途中で薬をやめてしまう方、もらったまま一度も飲ませない方もいらっしゃいます。
しかし、飲ませないことが原因でペットに不都合が生じる可能性があるかもしれないことをご存じでしょうか。
なぜならば、獣医師は、処方した薬は飲んでいることを前提として、診断したり、次の治療方針を決めているからです。
薬を飲む前と飲んだ後で血液検査の数値を比較したり、目で見たり、手で触ってみたりできるものに関してはその状態を判断し、薬の効果を確認します。
もし薬を飲んでも効果がみられないようであれば薬が適切ではないことになりますので、薬の量を増やしたり、別の薬に変えたり、違う病気を疑うことも検討していくのです。
このように、薬を飲ませないことが原因で治療に対する方針が変わり、そのためにペットがさらに検査をする必要ができてツラい思いをしたり、余計に費用がかかる可能性もあるのです。
獣医師に伝えるときのコツ
薬を勝手にやめるたりするのではなく、飼い主さんとしてできることは何なのでしょうか?
それはズバリ、「獣医師に正直に伝える」ということです。
ですが、「薬を飲ませたくありません!」と頑なに薬を拒否するのは、おすすめできません。
ここで獣医師側が「どうして飼い主さんは薬を拒否するのだろう?」と掘り下げて考えてくれればよいのですが、そのようなタイプでなければ、感情的になって怒ったり、「だったら好きにしたらいいのでは?」と飼い主さんを突き放したりと、飼い主さんと獣医師との関係性を損ねかねません。
そこで、獣医師との関係をこじらせずに「獣医師に正直に伝える」ための2つのコツをご紹介したいと思います。
1つめは、飲ませたくない理由をきちんと説明すること。
2つめは、「相談」というスタイルで伝えること。
では、それぞれのコツを詳しく見ていきましょう。
理由をきちんと説明する
1つめは、飲ませたくない理由をきちんと説明することです。
・薬の副作用への不安
・薬の効果への疑問
・薬をいつまで続けるかわからないことへの不安
・ライフスタイルの問題で投薬が困難
・経済的な懸念
・ペットが投薬を嫌がることへの悩み
例を挙げてみましたが、お薬を飲ませたくない理由はさまざまだと思います。
その理由とともにお薬飲ませることに抵抗があることを獣医師に伝えてみましょう。
例えば…
薬の副作用が心配な飼い主さんがその不安を訴えれば、獣医師は薬のメリットとデメリットを丁寧にもう一度説明をしてくれると思います。
金銭的にお薬を続けることが難しい飼い主さんの場合は、もう少し安価な薬で代用することを検討してくれたり、薬の種類を減らしてくれるかもしれません。
仕事などのライフスタイルの事情で1日3回お薬を飲ませるのが難しい場合には、1日1回または2回のお薬などに変えてくれることでしょう。
飼い主さんから「薬を飲ませたくありません!」と言われるだけでは、獣医師はなぜ飼い主さんがそのように考えているのかがわからないため、戸惑い、怒るといった反応をしてしまいがちです。
ですが、飼い主さんがお薬を飲ませることになぜ抵抗があるのか理由がわかれば、仮に戸惑ったとしても、獣医師はそれに対する解決案、妥協案を提案することができるのです。
「相談」というスタイルで伝える
獣医師は、少しでもペットがよくなるようにとベストを尽くしながら日々の診察にあたっています。
そこに飼い主さんから「薬を飲ませたくない」と一方的に突きつけられれば、自分の診断や治療を否定されたような気持ちになったり、困惑するものです。
では、獣医師のプライドを傷つけず、飼い主さん自身の要望を伝えるにはどうしたらいいでしょうか。
それは、2つめのコツである、「相談」というスタイルで伝えることです。
例えば、薬を何種類も飲ませることに不安を感じていて、薬を減らしたいと感じている場合には、
「先生、今お薬をたくさん飲ませていて体への負担が心配なんですが、どれか1つでもなくしたらどうなりますか?」
「先生、薬をたくさん飲ませることに不安を感じているのですが、どれか1つでも減らすのは難しいのでしょうか?」
という感じで相談をしてみるのです。
「先生、どうでしょうか?どうにかなりませんか?」とお伺いを立てるように話をされれば、獣医師も自尊心を損ねることなく、飼い主さんの悩みに向き合いやすくなります。
おべっかを使ったり、お世辞を言ったりする必要はありませんが、獣医師としての立場を尊重しつつ、飼い主さん自身の希望や考えを伝える方がコミュニケーションはギスギスせずにすむのです。
まとめ
処方された薬を飲まないという行為は、ペットの今後の治療に影響があるだけではなく、薬代がもったいなうえに、獣医師に本当のことを隠しているため飼い主さんの精神衛生上もよいとはいえないでしょう。
獣医師に伝えるのはなかなかハードルが高いかもしれませんが、丁寧に相談をすれば、多くの獣医師は飼い主さんの気持ちや事情を理解してくれるはずです。
自己判断でお薬の服用をやめてしまう前に、率直に不安や疑問を一度相談してみてくださいね。