ペットの「万が一」が来る前にしておこう!家族みんなでの話し合い

ペットの「万が一」について家族で話し合いをしたことはありますか?

 

「まだ元気なのに病気について考える?縁起でもない!」

 

このように「万が一」について話し合いをするのに抵抗がある方は少なくありません。

そのようなお気持ちも分かります。

しかし、いざそのような事態になってから考えると、いい選択ができないことがあります。

不安や心配が先に立ってしまって冷静に判断できなかったり、思わぬ意見の対立があったり…。

 

そのような悲しい選択をしないためにも、日頃から考え、そして家族で話し合いをすることをおすすめします。

目次

家族の意見が割れて手術ができなかった犬のお話

私には忘れられない犬とご家族がいます。

 

動物病院に勤めていたころのことですが、「具合が悪い」と一匹の犬が病院にやってきました。

診察の結果、子宮蓄膿症であったため、緊急手術の必要性があることがわかりました。

 

子宮蓄膿症というのは、避妊手術をしていないメスの犬によくみられ、文字通り子宮に膿が溜まるのですが、処置が遅れると命に関わる緊急性の高い病気です。

病院に連れて来られたときには、すでに発症してから時間も経っていたため、すぐにでも手術をする必要がありました。

 

ところが、手術に関して連れてきたご夫婦の間で意見が分かれてしまったのです。

奥さまのほうは、「とにもかくにも命を助けてほしい」と手術を希望されました。

しかし、一方のご主人は、手術代が高額になることを懸念されて、手術をすることに抵抗があるようでした。

 

1時間ほどお二人でお話しされていたことでしょうか。

結局、その日は手術をせず、入院で点滴をしながら様子を見ることになりました。

 

翌日になり、診察時間が始まる朝一番に飼い主さんから電話がかかってきました。

やはり手術をして欲しいとのことです。

それからスタッフ一同、大慌てて手術に臨みました。

 

しかし、その緊急手術の甲斐なく、犬は手術後まもなく亡くなってしまい、誰しもにとって後悔の残る結末を迎えることとなったのです。

 

もし、診察した時点で手術をするという決定ができていれば、この犬は助かったかもしれません。

もし、ご家庭で日頃からこのような万一の事態に備えて話しあいができていれば、この犬は助かったかもしれません。

 

術後に駆けつけた奥さまが悲しむ姿は、思い出すといまだに胸が痛みます。

家族であっても価値観は違う

家族で暮らしていると、ペットに対する想いは同じであろうと考えてしまいます。

しかし実際は、蓋を開けてみれば全然違うということもしばしばあるものです。

 

判断をするのに時間がかけられるケースならば、判断が必要な時点でゆっくり考えてもいいのかもしれません。

 

しかし、先ほどの子宮蓄膿症のケースのような緊急事態では悲劇が起こりえるのです。

 

たとえ家族であっても、一人一人価値観は違います。

・どのような治療をしてあげたいのか

・どの程度まで治療をしてあげたいのか

・どれくらいお金をかけてあげられるのか

・どれくらい世話をしてあげられるのか

話をすることでお互いの認識や価値観の違いを知ったり、その溝を埋めるという作業をすることができます。

 

もちろん、いざというときが来たら、話し合いをしたときとは違う判断をするかもしれません。

時間が経つうちに考え方が変わるかもしれません。

 

それでもやはり、家族同士で話をするという機会をつくり、価値観を確かめ合うという行為は大切なのではないでしょうか。

 

いつかは必ずやってくる別れ、突然にやってくる「万が一」から目を背けず、一度ご家庭で話し合いをする機会を作っていただきたいと思います。

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