ペットが病気になったり、何か症状で困ったことがあるときに、同じような体験をした人の話を聞いてみたい、経験談を知りたいと思う方は多いのではないでしょうか。
確かにどのような種類の悩みでも、経験者からの話を聞くことで不安が減ったり、納得したりと心理的なストレスが軽くなることはあるものです。
しかし、悩みが医療のときは、口コミや経験談の取り扱いには注意が必要です。
目次
よその体験談が自分に当てはまるとは限らない
そもそも、自分のペットがかかっている病気や症状が誰かのペットと同じだ、と判断するのはとても難しいことです。
たとえ同じ病名がついていたとしても、病気の進行度や範囲によって対処法や治療法がまったく異なりますし、そのほかの基礎疾患や飲んでいる薬、アレルギーの有無など、病気以外の状況もそれぞれ異なるものです。
ですから、一概によそ様のペットの経験が自分のペットにすべて当てはまるとは限らないのです。
脳は思考を怠けたがる
また、私たち人は、決定に際して不合理に判断してしまう、「認知バイアス」と呼ばれる脳の癖を持っています。
人間の脳は、日々多くの情報を取り扱うため、常に負担がかかっている状態です。
そんな脳は省エネ化を常にもくろんでいて、少しでもラクをして思考や判断をしたいと思っています。
そこで脳の省エネの結果として起こるのが、「可用性バイアス(利用可能性ヒューリスティック)」です。
これは、取り出しやすい記憶情報を優先的に頼って判断をすることです。
この結果、素早い判断ができるのですが、判断に偏り(バイアス)が生じてしまう可能性が出てくるのです。
取り出しやすい記憶情報の要因として、以下の3つが大きいといわれています。
①インパクトのある情報
②すぐに思い出せる情報
③具体的な情報
要するに、強く共感した話、印象に残った話、いつも見たり聞いたりしている話、友人や身近な知り合いからの話などは、判断するときの材料になりやすいということです。
ペットの話で考えてみると、近所に住んでいる顔見知りのペットの話だったり、よく見ているペット情報の口コミサイトに掲載されている話などでしょうか。
ネットか何かでペットの症状と似た内容があると、「あぁ!まさにこれだ!」と妙に自分のなかで合点して、書かれている内容を信用したくなるのもこのバイアスのせいかもしれません。
このバイアスが働いてしまうと、自分では偏りなく情報を収集しているつもりでも、無意識のうちに自分にとって安心できる情報だけを集めてしまう危険性があり、本当に自分にとって正しい情報に基づいて判断するのが難しくなることも起こりえます。
誰かの経験談よりもまずは獣医師に意見を求めよ
もし、ペットの医療のことで迷ったり悩んだりしたときは、友人、知人、ネットの先の見知らぬ人よりは、まず先に獣医師に意見を求めて欲しいと思います。
私たち飼い主が拠り所にすべきなのは、「たった一匹の経験談」ではなく、「科学的・統計学的なデータに基づいた知識」です。
そして、それを提供できるのは専門家である獣医師なのです。
もちろん体験談を参考にするなというわけではありません。
体験談を知ることで、励まされたり心の支えになることもあるでしょう。
しかし、先ほども述べたように、個人の体験談が自分と一致するかというのは病気においては難しく、また体験談が科学に基づいた判断の妨げになることもありえるのです。
大切なのは、体験談から得た情報をうまく扱うということなのかもしれませんね。
まとめ
医療においては、身近な人からの情報やネット上の口コミなどは、扱い方に気をつけることが大切です。
もしペットの治療などで判断が必要なときは、バイアスがかかっていないかを意識し、自分自身でしっかりと考えたいものですね。