動物病院に行って薬を処方してもらったのに、全然症状がよくならない。
信頼できないので別のところに行って診てもらったら、すっかり治った。
病院を変えて正解だ。
やっぱり、あそこの動物病院は腕が悪い。
このような経験をお持ちの方はいらっしゃいませんか。
「前の獣医師はヤブ医者で、今度の獣医師は腕がいい」と考えてしまう飼い主さんもいらっしゃることと思います。
しかし医療者目線からすると、必ずしもそうとも言えない場合があるのです。
一度の診察では解決できないのが普通
病気の診断や治療において、最初から症状の原因をすぐさま見抜き、解決するための最適な治療を提案するというのは非常に難しいことです。
何度か診察を重ね、薬などの治療に対する体の反応を見ながら、その都度薬を変更するなどして対処する。
そうしている間に徐々にデータが蓄積され、より的確な病気の特定に近づくことができる。
これが一般的な病気の診断における流れです。
飼い主としては一度の診察でズバッと決めて欲しいと思うところですが、
「〇〇を使って治らないから、この病気ではない」、
「△△という薬で症状が治まっていたけど、やめたら再発したからこの病気の可能性がある」
と、さまざまな試行錯誤を経たうえでないとわからないのが病気というものなのです。
後医は名医
ひとの医療では、「後医は名医」という言葉があります。
最初に見た医師より後から見た医師のほうがより正確に診断がしやすいため、患者さんにとっては「名医」に見えるという意味です。
これは獣医師でも同じことです。
後から見た獣医師は、
・前の獣医師がどのような判断をしたのか
・治療がペットにどのような影響を及ぼしたのか
というような情報を得ているため、大きなヒントをもらったアドバンテージのある状態で診断ができるのです。
「〇〇という薬が効かなかったならば、△△が効くのではないか」と、一段階進んだうえで判断ができるため、「当たり」に近づく確率が上がっているわけで、初めての診察、診断で症状がよくなることも十分にありえます。
その結果、飼い主さん目線からすると「動物病院を変えたら治った」という結果に見えるのですね。
ですから、必ずしも転院先の獣医師の診断力が優れているとは一概には言えないのです。
同じ症状が続くときは、同じ動物病院に行く
「診察に対する態度や姿勢に納得ができない」、「獣医師との相性が悪い」ということでなければ、同じ症状が続いている場合には動物病院をむやみに変えず、同じ動物病院に通うのが基本的にペットのためになります。
先ほど述べたように、どのような病気であっても一度の診察、治療で決め打ちするのは困難であり、症状や体の変化を継続して観察していくなかでわかってくるものもあるため、同じ獣医師が診ていることが必要になってきます。
「ちっともよくならない」とばかりにドクターショッピングを繰り返していては、かえって適切な治療を受ける機会を逃してしまう可能性もでてきます。
ですから、もし症状がよくならない場合には、それをきちんと伝えることのほうが新たな動物病院探しよりも重要とも言えるでしょう。
一度の受診で改善が見られなかったからと見切りをつけず、根気強く病気と獣医師に向き合うことの大切さを知っておいていただければと思います。
まとめ
病気を特定し治療する過程は、飼い主さんが想像しているよりも複雑です。
病気がよくならないと不安になる気持ちはよくわかりますが、コロコロと動物病院を変えるのが得策とはいえない場合があります。
転院は本当に必要かをよく考えてからするようにしたいですね。