仕事柄、飼い主さんの付き添いで動物病院に行くことがあります。
その際、飼い主さんは得てして、獣医師やスタッフの話に頷くばかりであまり積極的に質問を投げかけることはありません。
きっと動物医療スタッフに対して遠慮をしているのだろうと考えていたのですが、『情報を捨てるセンス 選ぶ技術』という本によるとどうやら理由はそれだけではないようです。
専門家の前で起こる『脳のスイッチオフ現象』
情報が氾濫し、どれを選択してよいか判断に困る情報社会に私たちは生きています。
そのような社会で私たちが求めるのは、問題に対する答えと確実性を提供してくれる、いわゆる『専門家』と呼ばれる人たちです。
獣医師も専門家のなかに含まれるといってよいでしょう。
興味深いことに、私たちは専門家のアドバイスを聞いている間、脳の独立した意思決定を司る部分はスイッチが切られたのも同然の状態になることが実験で証明されているそうです。
専門家が話し出すと、人はまるで自分で考えることをやめたようになってしまうのです。
専門家を前にすると、その言葉を額面通りにただ頷いて受け取ってしまうので、本当のところは何について話をしているのか理解ができていないという結果になります。
この話を聞いて、「なるほど!だから、先生があんなに話をしていたのに何も頭に残っていないのか」と納得される方も多いのではないでしょうか。
しかし、専門家もひとですから判断を誤ることがあります。
無条件に専門家の意見を鵜呑みにしていては、後悔する結果を招く可能性があるのです。
獣医療について考えると、むやみなドクターショッピングも考えものですが、重い病気などの可能性がある場合には慎重に判断をする必要があります。
その際には、一人の専門家の意見にむやみに従うのではなく、専門家にも限界があることを認識し、自分の意思決定の脳のスイッチをオンにすることが大切です。
そのための対策として、『情報を捨てるセンス 選ぶ技術』に紹介されているものを見てみましょう。
専門家に服従しないためのヒント
・自分自身が専門家になることにチャレンジしよう
・いろいろ見て回れ すべての専門家が同等ではない
・せめてセカンドオピニオン、サードオピニオンを求めよう
・有能であるという過信と本当の有能とを見誤ってはいけない
・確実だと主張する専門家よりも、すべてを知っているわけではないと認めることができる専門家をさがそう
・専門家の業績をかならず見ておくこと
・専門家が最新の調査やテクニックをどの程度知っているか質問してみよう
・専門家の推論をチェックし、その証拠を見せてほしいと頼もう
・専門家も人間。たくさんの見当違いをするし、さまざまな偏見ももっていることを覚えておこう
・専門家があなたと関わろうとしなかったり、恩着せがましい態度を取るようなら、アドバイスを求めるべき相手ではない
・あなたにはあなた自身の心があることをけっして忘れないこと
情報を捨てるセンス 選ぶ技術
いかがでしょうか。含蓄に富むヒントですね。
大事なペットのことですから、重大な判断をする際にはこれくらいの慎重さを求めるのも必要かもしれません。
専門家任せにした時、結果がうまくいったり、納得できるようであればいいのですが、そうでなかった場合には後悔してもしきれません。
もっと詳しく知りたい方は、ぜひ『情報を捨てるセンス 選ぶ技術』をどうぞ。
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