ペットと暮らすうえで欠かせないのが動物病院代。
ペットも年齢を重ねるにつれ、ひとの体と同じようにのあちこちの調子が悪くなります。
ペットのためを思えば、できるだけのことをしてあげたいと思うのが人情というもの。
若いころは予防接種のときぐらいしか行かなかった動物病院に頻繁に通うことになり、医療のための支出が急激に増えていきます。
ペットもひとと同じように年をとり、高齢になれば病院のお世話になるのでお金がかかるということは、冷静に考えればわかることです。
若くして病気になってしまう場合は別としても、本格的に医療費がかかるようになるまでには時間の猶予があります。
ならば、それまでにお金を貯めて備えるなり、ペット保険に入るなりして対策をすればよいのですが、なかなか実際に行動するのは難しいです。
私は高齢動物の飼い主さんと話をする機会が多いのですが、「こんなにお金がかかるとは思わなかった」と嘆かれる方も少なくありません。
ペットの医療費について勉強不足、準備不足だといって片付けてしまえばそれまでですが、これは誰にでも起こりうる問題です。
『今』、目の前に元気で愛らしいペットがいれば、ごほうびのおやつを買ってきて喜ぶ様子を見たり、素敵なお洋服を着せたり、新しいおもちゃを買ってきたりしたいのが、ふつうの飼い主心でしょう。
しかし、『今』の快楽だけに目をやるばかりで備えが不足するようでは、『未来』の自分とペットが困ってしまいます。
どうにかして現在の誘惑に打ち勝ち、『未来』に向けてお金の準備をする必要があります。
そこで、「誘惑にどうやって打ち勝ったらよいかわからない」という人におすすめしたい貯蓄のためのアイディアを2つご紹介します。
アイディア① 未来からの手紙
まず、おすすめしたいのが『未来からの手紙』という方法です。
「おすすめといいながら未来からの手紙とはふざけたことを」とお思いになるかもしれませんが、これはれっきとした行動経済学に基づいた手法ですのでご安心ください。
将来のために貯蓄するのが難しいのは、未来というものが自分の問題ではなく、どこか他人の問題のように感じるからだと行動経済学ではいわれています。
つまり、『未来を身近に感じること』がお金を貯めるうえでポイントになります。
そこで登場するのが、先ほどの『未来からの手紙』という手法です。
スタンフォードの心理学者ケリー・マクゴニガル氏が推奨する方法として知られていますが、「未来の自分になりきってみて、今の自分に対して手紙を書いてみる」というやり方です。
ここでは以下の3つのポイントがあります。
①前向きな表現を使う
②具体的で詳細にイメージする
③心を込める
①前向きな表現を使う
ネガティブな言葉ではなく、気分がよくなるような表現を使います。
今の自分のおかげで、未来で幸せに暮らしているというような明るい気持ちになるようなものがよいでしょう。
②具体的で詳細にイメージする
できるだけ未来の状況を詳しく想像しながら書くことが大切です。
詳細になればなるほど、今と関連付けやすくなり、また未来に共感するため、行動がしやすくなります。
また、『未来』と漠然とするよりは、具体的な日付を提示されるほうが貯蓄の効果が高いといわれています。
③心を込める
未来と今をつなげるためには、共感と感情移入をするとよいとされています。
そのためには、バカバカしいという気持ちは脇にそっと置いておいて、心を込めて書きましょう。
ポイントは以上です。
さて一般的には、未来の自分から今の自分へ手紙を書きますが、ここでさらに私から提案があります。
ペットのための貯金なのですから、『未来のペットから今の自分へ手紙を書く』という風にしてはどうでしょうか。
これならば、自分から自分に向けて手紙を書くのはなんとなく恥ずかしいという方でもできますし、よりペットのために頑張れるような気がしませんか。
平均寿命より2~3年ほど前から動物病院にかかることが多くなるので、それくらいの未来の誕生日を迎えたペットからの手紙というつもりで取り組んでみてはいかがでしょうか。
アイディア② ペットの写真を財布に入れる
ひとは頭の中で想像するだけでよりは、実際に目で見たほうが感情移入できるといわれています。
この性質を利用して、無駄な支出を抑え、未来のためにお金を積み立てましょう。
では、具体的にどうするかというと、お財布にペットの写真を入れておくという単純な方法です。
写真を財布の中のよく見えるところに1枚入れます。
そして、お財布を開くたびに、自然とその写真が目に入るようにします。
その写真に吹き出しで「お金を貯めてくれてありがとう」なんてコメントを入れれば、次第にお財布の紐が固くなっていくでしょう。
お財布なんかは使わない、カード決済、スマホ決済主義という方も支払いのたびにペットの写真が目に入るような工夫を是非してみてください。
残念ながら私が調べた限りでは、ペットの写真を老化させるようなアプリなどはまだないようです。
もし、画像編集に自信のある方ならば、ペットの写真を白髪交じりなどに加工するとより効果が高くなると思います。
まとめ
行動経済学に基づいた、未来の自分とペットのための貯蓄アイディアを2つご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
ペットが年をとるなんて想像したくない、まだまだ先のことだから大丈夫という方こそ貯蓄を始めるチャンスです。
一か月あたりの貯蓄額が3000円ならば10年間で36万円、5000円ならば60万円もの額になり、大がかりな手術や長期にわたる治療・薬などの支払いの際には大きな助けになることでしょう。
なんとなく行っていた飲み会や食事会、ついつい買ってしまっていたお洋服を我慢することで、ペットの医療費を恐れなくてすむ未来を迎えられます。
『千里の道も一歩より』を胸に、今の暮らしを過度に犠牲にすることなく、ペットが最期まで安心して暮らせるように少しずつ備えてみてはどうでしょうか。
行動経済学に興味がわいた方には、こちらの本がおすすめです。
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