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犬と暮らす上で、飼い主がもっとも気になることといえば――やはり「愛犬の健康」ではないでしょうか。
現代の犬の平均寿命はおよそ15歳前後といわれ、かつてよりも長生きするようになりました。
しかしその一方で、長寿に伴い増加しているのが「がん」です。
実際、犬の死因第1位はがんとなっており、加齢性疾患として避けがたい病気のひとつになっています。
今回は、そんな「がん」と向き合う飼い主さんに向けて書かれた書籍、『愛犬ががんと診断されたときに読む本』をご紹介します。
- 愛犬が「がん」と診断された方
- 高齢犬と暮らしていて、病気への備えをしておきたい方
- 犬のがんについて基礎から知りたい方
愛犬ががんと診断されたときに読む本(緑書房)
著者はどんな人?
著者の丸尾幸嗣先生は、長年にわたり、小動物臨床においてがんのエキスパートとして活躍されてきた獣医師です。
現在は岐阜大学名誉教授であり、かつては日本小動物外科設立専門医として、がん関連の執筆や翻訳を数多く手がけてこられました。
獣医師向けの専門書も多数執筆しており、まさに動物医療における「がん」の専門家といえるでしょう。
どんな本?
『愛犬ががんと診断されたときに読む本』は、全部で6章から構成されています。
その6章のタイトルは、次のとおりです。
- 犬のがんについての基礎知識
- 犬のがんの基本的な治療
- 愛犬ががんと診断されたとき
- がんになった愛犬と暮らしていくための心構えとやるべきこと
- 最期を迎えるにあたって
- 愛犬のがんとの向き合い方11カ条
がんとは何ぞやという基礎知識からはじまり、診断の流れや治療、家庭での対処、そして看取りまで、がんにまつわる一連の基礎知識を学ぶことができます。
全体を通して平易な文章で書かれているので読みやすく、内容としてもそれほど難しくはないと思います。
飼い主さんにはわかりにくい用語が時折出てきますが、ページ端に用語解説も載っているので安心して読み進めていくことができます。
また、岐阜大学動物病院、北海道大学動物医療センター、日本小動物医療センターなどの専門医療施設、がん関係の専門医・認定医リストに関するQRコードが掲載されており、いざ愛犬ががんになったときにパッと調べられるので使い勝手がいいのではないしょうか。
特定のがんについて詳しくというよりは、がんという病に罹ったときの流れがザックリわかるという内容なので、専門的知識が欲しい人には物足りない感じがするかもしれませんが、初めてがんについて勉強したいという人にはぴったりだと思います。
感想
本のタイトルは『愛犬ががんと診断されたときに読む本』となっていますが、私が読んだ感想としては、がんになってからではなく、がんになる前に読んでおくほうがいいのではないかというのが正直なところです。
なぜなら、この本は特定のがんの治療法や予後に関する詳細な説明よりも、全体像を知るための入門書という立ち位置だからです。
実際、私自身もかつて愛犬をがんで亡くしましたが、そのときは心の余裕もなく、本をじっくり読むどころではありませんでした。
そうした経験からも、「事前に基礎知識を持っておくこと」の大切さを痛感します。
この本を読んでおけば、考えたくはありませんが、万が一愛犬ががんになってしまった場合でも、動物病院でのステージだのグレードだのという説明も理解しやすく、少しかもしれませんが冷静に診断を受け止める心の余裕ができることでしょう。
ですから、私としては、‟がんになる前”の心に余裕があるときに読んでいただいて、愛犬ががんになるかもしれない万が一に備えるのをおすすめしたいと思います。
この本は、いざというときに落ち着いて状況を把握するための“地図”のような存在になってくれるはずです。
まとめ
犬のがんは決して珍しい病気ではなく、2〜3頭に1頭ががんを発症すると言われるほど。
にもかかわらず、飼い主さん向けにがんだけをテーマにした書籍は非常に少ないのが現状です。
そんな中で、動物のがん医療に人生をかけてきた専門家が、一般飼い主に向けてわかりやすく解説してくれるこの本は、非常に貴重な一冊です。
「がんなんて、うちの子には関係ない」と思ってしまいがちですが、だからこそ、“まだ元気なうちに”、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?