世はまさに猫時代。
お猫さまを猫かわいがりしても、誰からもとがめられることもなく、むしろ人から「いいね!」と言ってもらえる素晴らしい時代です。
そして、それと呼応するように猫たちの寿命もどんどんと延び、年齢が15歳を超える猫も珍しくなくなってきています。
お猫さまが長生きしてくれるのは喜ばしいかぎりなのですが、しかし、それだけでは世の中済みません。
- 飼い猫の行動が今までとちょっと変わってきている気がしている
- 猫には長生きしてほしいけど、ちょっと将来が心配
- 猫が年取ったときのことを勉強しておきたい
目次
吾輩は認知症ねこである(小学館)
著者は、イラストレーターの林ユミさん。
あたたかみがある可愛らしいイラストが特徴的で、子ども向けの本などを中心に手掛けていらっしゃいます。
お子さんがいらっしゃる方だと、ベストセラーとなった【よのなかルールブック】という本で林ユミさんのイラストを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
おすすめポイント① 猫の認知症体験談というレアな本
【吾輩は認知症ねこである】の中でも出てきますが、猫の認知症については解明されていない部分が多く、獣医療界でも犬と比べてこれまであまり問題視されてきていないのが現状です。
しかし、飼育栄養状態がよくなり高齢の猫がどんどんと増えていることを踏まえると、これから認知症の猫が増え、悩む飼い主さんが増えてくることは想像に難くありません。
また、ネットを駆使する方は別として、散歩をする犬と違い、猫の場合は飼い主さん同士がお互いにコミュニケーションを取りあう機会があまりなく、「先輩」から参考になる話を聞くということも少ないことでしょう。
そんななかに彗星のように現れたのが、この【吾輩は認知症ねこである】なのです。
これから増えてくるであろう、しかし現状はそれほど多くはない猫の認知症というテーマを扱った本は貴重な存在です。
愛猫のボンの行動がおかしいことに気がついたときから始まる、飼い主である林ユミさんとパートナーのゴローさんの心の葛藤、生活の試行錯誤がつぶさに描かれています。
ご家庭ごとに生活スタイルや家の構造が違うとはいえ、林さん達のリアルな工夫はとても参考になると思いますし、また認知症を受け入れるところからボンを見送るまでの心情の動きは切なくもあると同時に、同じ境遇の方々に対して「悩んでいるのは自分たちだけではない」という励ましになるのではないでしょうか。
おすすめポイント② 読みやすさ抜群!コミックエッセイ
【吾輩は認知症ねこである】のポイントは、ずばりコミックエッセイであるところ。
活字の本だと、読まなければいけない、読みたいと思っていても、どうしても億劫になってしまうときがあります。
それがあら不思議。
コミック、つまり漫画というスタイルであれば、本を読むのが億劫というハードルを易々とクリアしてしまうのです。
漫画はとかく批判されがちですが、大事なのはカタチよりも内容を理解・把握できるかどうか。
この【吾輩は認知症ねこである】のコミックエッセイというスタイルは、本を日頃手に取らない方でも抵抗なく読んでいただけるという点でとてもいいと思います。
また何よりも、林ユミさんの絵がとても可愛らしい。
いわゆるほっこり和み系なんですが、そのイラストの優しい印象のおかげで、とかく湿っぽくなりがちなペットの高齢問題の話も重くなりすぎることなく、最後まで読み進めることができます。
個人的には、最後はさすがに泣かずにはいられませんでしたが…。
おすすめポイント③ 専門家によるプチアドバイス
【吾輩は認知症ねこである】は全7章から構成されているのですが、各章のコミックの後に
●林ユミさんのエッセイ
●獣医行動診療科認定医・小澤真希子先生による対談形式アドバイス
●4コマ漫画
があります。
小澤先生のアドバイスはページ数にするとそれほどはありませんが、高齢猫と暮らすうえで気をつけたいポイントはしっかりと押さえられていて有用ですので、ぜひぜひ読んでいただきたいですね。
まとめ
【吾輩は認知症ねこである】は、個人的には高齢猫と暮らす皆さんにおすすめしたい本です。
いざという時が来てからではなく、「そういう日が来るかもしれない」という心の準備のためにも一度手に取っていただきたいですね。