ペットとの楽しい暮らしにもかならず終わりがあります。
終わりをきちんと引き受けるのが飼い主としての責任ではありますが、そのツラさは何度経験しても変わることがありません。
人とペットの距離が近くなり、ペットが家族同然になった今の時代、ペットが亡くなることによる精神的ストレスで不調をきたす『ペットロス』は珍しいことではありません。
しかし、まだ世間には「ペットが亡くなったくらいで」という風潮も少なからずあり、苦しんでいる人にさらに追い打ちをかけています。
今回紹介する【「ペットロス」は乗りこえられますか?】は、今まさにペットロスで苦しんでいる人はもちろんのこと、その周囲の人にも読んでいただきたい本です。
それでは、早速どのような本か見ていきましょう。
- ペットとの別れがつらく、悲しみから抜け出せない人
- ペットとの別れが近くなり、今から不安な人
- 身近な人がペットロスになり、どのように対応したらいいか悩んでいる人
目次
「ペットロス」は乗りこえられますか?(KADOKAWA)
著者はどんな人?
著者は、濱野 佐代子 先生。
獣医師、臨床心理士、公認心理師の3つの資格をもつ、心の専門家です。
専門は、ヒトと動物の関係学・生涯発達心理学で、専門書の執筆も多数されています。
2024年時点では、日本獣医生命科学大学 比較発達心理学研究室所属の教授です。
ポイント① 心の専門家による一般向けの本
濱野先生は、あとがきのなかでこのように書かれています。
ペットを亡くされた方は救いを求めてインターネットで検索したり書籍を読んだりするかと思います。
しかし、中には間違った内容のものや現実的ではないものもあり、飼い主さんを混乱に陥れます。
また、ペットロスに関する本は少なく、あったとしても心の専門家が執筆した本はほとんどありません。
「ペットロス」は乗りこえられますか?
これまで何冊もの専門書で執筆されてきた先生が、あえて一般向けの本を書かれた理由がここにあります。
私もペットロスに関する本を何冊か読んできましたが、専門書ではなく一般向けの本で、かつ臨床心理士、公認心理師という心の専門家が執筆した本はなかなか思い出せません。
ポイント② ツラいときでも読める
本当に心がしんどいときは、本を読む気力も体力もないことでしょう。
【「ペットロス」は乗りこえられますか?】は、あとがきも含めて110ページ。
全10章で構成されているので、1章は10ページ前後です。
字は大きめで、くまくら珠美さんが描いた愛嬌いっぱいの動物の絵もふんだんです。
これならばツラい状況下にあっても、少しずつ読み進むことができるはずです。
人によってはページ数が少なく物足りなさを感じる場合もあるかもしれませんが、本を読むのも大変だという状態でも読みやすい点において優れていると私は思います。
全10章のタイトルは、以下のとおりです。
●1 人とペットの絆
●2 後悔と心身の不調
●3 ペットロスの悲嘆のプロセス
●4 世の中に認識されにくい悲しみ
●5 ペットロスからの「回復・適応」とは
●6 様々な見送りの方法
●7 回復・適応へのサポート
●8 ペットロスの悲しみに寄り添う
●9 悲しみのトンネル
●10 トンネルの先に
ポイント③ ペットロスの本人だけではなく、周りの人にも役立つ
『4 世の中に認識されにくい悲しみ』で書かれていますが、ペットロス状態の方をさらに苦しるのが、周囲の理解を得られないことです。
職場の人、友人、近所の人、そして家族…。
身近な人々による何気ない一言が、苦しみの渦中にいる人を追い詰めてしまうのです。
もし自分の周りにペットロスで悩んでいる方がいた場合には、不用意な言葉で相手を傷つけてしまう前にぜひこの本を手に取ってみてください。
一体相手はどのようなことで悩んでいるのか?
どのように自分は対処したらよいのか?
そのような疑問を解決するヒントが得られることでしょう。
まとめ
【「ペットロス」は乗りこえられますか?】は、わかりやすく書かれた心の専門家によるペットロスの解説本です。
一般向けの本であるため、ペットロスについて詳しく専門的に学びたい人には物足りなさがあるかもしれませんが、渦中にいる人、その周辺にいる人の助けになることと思います。
我が家では家族で読み、『6 様々な見送りの方法』に出てくる真珠葬が気になるねという話をしています。
興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。